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ニューズレター(税務関連)

2010年2月
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申告書別表の記載等はどうなるか 法人税務への影響と対応 Page3


IV.会計上の見積りの変更

会計上の見積りの変更については、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」およびその適用指針によれば、その変更が変更期間のみに影響する場合には、変更期間中に会計処理を行い、その変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行うとあり、過去にさかのぼっての処理を行わず、その影響を当該事業年度以降の財務諸表において認識することとされている。

そのため、税務上は過年度に係る確定申告書に添付した決算書における数値に変更はなく、当然のことながら当該過年度に係る課税所得および税額に影響はないこととなる。

では、具体的な例を挙げてみよう。

【前提条件】

(1)

保有する備品の耐用年数について新たに得られた情報に基づき、従来の10年を6年に見直す会計上の見積りの変更を行った。

(2)

備品は2事業年度前に5,000で取得したものであり、残存価額をゼロとして定額法で償却している。

(3)

備品に関する耐用年数の変更の影響は図表5のとおりである。

(4)

法人税法上の法定耐用年数は10年とする。


図表5:備品に関する耐用年数変更の影響


耐用年数が
10年である場合

耐用年数を
6年に見直した場合

当事業年度の期首における残存耐用年数

8年

4年

当事業年度の期首における帳簿価額

4,000

当事業年度以降の毎期の減価償却費

500

1,000


同会計基準では、新たに得られた情報に基づいて耐用年数の見直しを行った場合には、その変更に係る遡及処理は行わないため前事業年度以前の財務諸表に変更はなく、したがって前事業年度以前での税務申告額に影響はない。

しかし、耐用年数を変更した事業年度以後の各事業年度における税務上の取扱いは、別途、法人税法に規定されている耐用年数短縮に関する承認等を受けない限りは償却限度額には異同は生じず、その後の事業年度においても法定耐用年数に従って算定された金額が償却限度額となる。

一方、会計上の減価償却費は見積りの変更後の耐用年数に従って償却することになるので、当該事業年度以降の減価償却費と法定耐用年数に基づく償却限度額とに異同が生じることとなる。本例では「1,000−500=500」の差異が生じ、同額が減価償却超過額として確定申告書において加算調整が必要となる。

このように会計上の見積りの変更があった場合、税務上は過年度に影響はないが、変更のあった事業年度以降の取扱いは注意が必要である。


V.過去の誤謬の訂正

1.誤謬の2つの類型

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の導入に伴い、過年度の財務諸表につき誤謬が発見され財務諸表を遡及して修正再表示の処理が行われた場合であっても、それらすべての場合に法人税の修正申告等の手続が求められるわけではない。法人税法上は、確定申告書に記載された課税所得金額や税額の計算につき、法人税法の規定に従っていなかった場合、あるいはその計算に誤りがあった場合にのみ修正申告書の提出あるいは更正の請求といった手続をとる必要があり、もしくは国税当局による更正処分を受けることとなるのである。

なお、会計上の観点において重要性が乏しく過去の財務諸表につき修正再表示が行われなかった場合においても、その対象となった事象が法人税法の規定に従っていなかったこと等に該当する場合には、法人税法上では同様に修正申告等の手続が必要となる。

同会計基準で誤謬として取り扱われる事項を次の2つの類型に区分して、それぞれのパターンにおける法人税法上の取扱いを見てみよう。

(ア)

法人税法の規定に従っていなかった、あるいはその計算に誤りがあった場合

(イ)

法人税法の規定には従っており、かつ、計算に誤りはないが、一般に公正妥当な会計処理基準には則していなかった場合




2.法人税法の規定に従っていない/計算に誤りがある場合

このうちの(ア)については、修正申告の提出あるいは更正の請求もしくは更正処分の対象になる。たとえば、前事業年度末における未販売の商品は、本来であれば期末商品残高として計上すべきであるが、棚卸集計漏れ等のために誤って売上原価に計上してしまい、その結果として前事業年度の損益計算書において当期純利益が過少に計上されていたことが、当事業年度になって発見された場合が該当する。

この場合は、その商品が前事業年度末において未販売であったにもかかわらず売上原価として損金の額に算入していたのであるから、法人税法の規定に従った計算となっていなかったことになる。したがって、法人税法上の取扱いとしては、財務諸表の修正再表示を行うか否かにかかわらず、当該事業年度に係る修正申告が当然に必要となる。

なお、法人税法上は修正申告書の提出に際して遡及修正を反映した決算書を提出することは要求されていない。このことは、同会計基準の導入前であれば、誤謬が発見された事業年度に係る損益計算書において「特別損益−前期損益修正」として誤謬に係る修正額が表示され、その金額が修正申告書に記載される税務調整額と一致することで確認が可能となることを理由としていた。

しかし、同会計基準の適用開始後は修正された決算書を修正申告書に添付しない限り、修正申告書の提出理由が明らかにならず、かつ、税務調整額の確認も行うことができないことになるので、国税当局に無用の混乱を生じさせないためにも修正された決算書を添付することが実務面で求められるものと思われる。この点については、今後税務上の取扱いに関する手当の整備が望まれる。


3.一般に公正妥当な会計処理基準に則していない場合

(イ)については、法人税法の規定自体には則して作成された確定申告書であるため、修正申告あるいは更正の請求もしくは更正処分の対象となる事象とは考えられない。たとえば、賞与引当金等の法人税法上は認められない引当金の設定にあたり、過年度においてその引当額の算定の基礎数値として誤った数値を用いたために過少(または過大)に引当設定されていたことが当事業年度になって発見された場合が考えられる。

この場合においては、そもそも当初の引当計上額が過少(過大)だったとしても、修正再表示による引当金繰入額の追加計上(減額計上)によって当期利益がその分だけ減少(増加)することとなるが、法人税の課税所得の算定上は引当金繰入額の追加計上(減額計上)額を含めた引当金残額の全額を損金不算入として処理する。したがって、結果として当初に申告した課税所得から異同は生じないこととなり、修正申告を行う原因にはなりえない。

なお、遡及修正を反映した決算書を改めて国税当局に提出することの取扱い自体は現行法人税法には何ら規定されていないが、修正再表示の適用対象となった各事業年度に係る確定申告書に記載された当期利益の金額や、決算書に記載された修正再表示の対象となった収益・費用および資産・負債の各金額と修正再表示された財務諸表に記載されたそれらの金額との間に異同が生じる。また、発見した誤謬について修正再表示を実施した事業年度の財務諸表は当該誤謬の修正結果を反映した繰越利益剰余金および資産・負債額に基づいて作成されることになるので、たとえば引当金の計上に係る誤謬があった場合には再設定した引当金残高が戻入処理されることになる。

したがって、当該事業年度に係る確定申告書における課税所得の算定はその戻入額を減算調整することとなるが、一方で当該確定申告書の別表5(1)の一時差異項目である引当金の期首残高は当初の決算書に基づいた金額のままなので、期首の加算留保額と当期の減算調整額とに差異が生ずることとなる。

この期首繰越損益金および引当金に係る不一致(不整合)は、実務上の対応として、当該確定申告書の別表5(1)の期首残高を修正再表示後の残高に一致させる方法で調整するとともに、別表5(1)の欄外等に引当金残高に修正があった旨を注記することが考えられる。なお、この調整を行うことによって直前事業年度の確定申告書別表5(1)の引当金期末残高および繰越損益金との不一致が生じることとなる。したがって、国税当局に無用の混乱が生じることを防ぐためには、修正再表示の対象となったすべての事業年度の財務諸表を添付することが必要になると考えられる。これらの点について、今後税務上の取扱いに関する手当の整備が望まれる。

確定申告書に係る修正申告あるいは更正の請求等が必要か否かは、その誤謬による修正再表示がどのような原因により遡及処理となったのかを精査する必要があると考えられる。


執筆者:

KPMG税理士法人 コーポレートタックス サービス

シニアマネージャー

村松 剛

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