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ニューズレター(税務関係)

2004年4月

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ストックオプション利益の二重課税の解消

本稿は、「旬刊経理情報」(2004年4月20日号/「特集 米国投資がますます有利になる日米租税条約の全面改正」)より転載したものです。

新日米租税条約に係わる議定書第10項に、ストックオプション制度により享受した利益に係わる規定が盛り込まれた。新日米租税条約および議定書は、課税権の明確化と両国協議の促進により、インセンティブ報酬制度として日米の多くの企業で導入されているストックオプション制度により享受された利益をめぐり発生していた二重課税等の問題の解決を図ろうとしている。


現行の取扱い

特段の規定なし

現行日米租税条約上、企業のストックオプション制度に基づき米国および日本の居住者が享受する利益に係る特段の規定は存在しない。 わが国国内税法においても、当該利益の課税につき、租税特別措置法で規定する適格ストックオプション税制以外特段の規定はない。

わが国税務当局は、所得税法28条の解釈によりストックオプション制度により付与された権利行使の利益を、給料、報酬その他これらに類する所得と認定し「給与所得」として課税しているのが現状である。米国親会社からストックオプションの付与を受けた日本子会社の役員等が、権利行使利益を「一時所得」として申告した後、税務当局より「給与所得」として課税処分を受けそれを不服として課税処分取消しを求めて現在係争中である。

本来、「報酬」の要素と、「キャピタルゲイン」や既存株主からの「贈与」の要素を併せ持つ複合的な性質をもつ所得であるストックオプションの権利行使利益に対する課税は、税法上特段の規定を設けるべきである。


日本の子会社への出向経験のある米国居住者の取扱い

ストックオプション制度のある米国企業に雇用されその日本子会社へ出向していた米国人従業員が、日本での勤務を終了し米国へ戻った後権利行使し利益を享受した場合、わが国税務当局は、その利益の額を権利付与から権利行使までの日数で除し日本勤務期間の日数を乗じた額をもって国内源泉所得とし、それに対し20%の税率で課税している。

わが国の税務当局は、当該非居住者(米国居住者)は、当該国内源泉所得を準確定申告書にて申告する必要があるとしている。

一方、当該米国居住者の米国における課税は、米国税法の特段の規定に従ってストックオプションの利益につき、株式取得後その譲渡まで課税を繰り延べ「キャピタルゲイン」として課税されるケース(クオリファイドオプション)と、「オーデイナルインカム」として権利行使した年度の課税を受けるケース(ノンクオリファイドオプション)に分かれる。

前者のケースでは、日本での課税が先行し、将来の米国での「キャピタルゲイン」課税時に日米で二重課税が発生する可能性を否定できない。

後者のケースでは、この所得だけであれば米国居住者が日本の所得税を米国の外国税額控除制度により米国連邦所得税から控除できることになるが、実際には他の所得の状況や、米国税法上の国外源泉所得の計算と、わが国の税務当局が主張する国内源泉所得の計算が必ずしも一致しないこともあり、二重課税が完全に排除されないケースもあった。

また、そもそもこういった日本の税務当局の課税執行に納得しない米国居住者が少なからず存在した。


新条約での取扱い

課税権の明確化

新日米租税条約の議定書第10項では、ストックオプション制度に基づき従業員等が享受する利益でストックオプションの付与から行使までの期間に関連するものを、新条約14条の「その他これらに類する報酬」とすることを合意し、さらに、次の4要件をすべて満たす場合には、ストックオプション行使の時に従業員等が居住者とならない締約国は、ストックオプションの利益のうち権利付与から行使までの期間に当該締約国内において行った勤務に関連する金額に対してのみ、当該締約国が課税権を行使することができることが合意された。

(1)

その勤務に関してストックオプションを付与されたこと

(2)

ストックオプションの付与から行使までの期間中両締約国内で勤務を行ったこと

(3)

権利行使日において勤務を行っていること

(4)

権利行使利益が両締約国の法令に基づき課税されること


新条約で企業の従業員等がストックオプション制度に基づき付与された権利の行使利益につき第14条所得とし、権利行使時に従業員等が居住者とならない締約国に権利行使利益のうち当該締約国での勤務に関連するものに対しての課税権が明確になったことより、米国居住者が享受する国内源泉所得に対する現在の日本の税務当局の課税執行が追認されたことになる。

また、後述するように二重課税の発生も予想されるため、両国の権限のある当局は相互協議をして問題の解決にあたることを規定している。


執筆者:

KPMG税理士法人
パートナー 駒木根 裕一

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