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ニューズレター(税務関係)

2004年4月

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課税方式別に見た事業体(パススルー型・ハイブリッド型)
の取り扱い

本稿は、「旬刊経理情報」(2004年4月20日号/「特集 米国投資がますます有利になる日米租税条約の全面改正」)より転載したものです。

現行の日米租税条約においては、パススルー事業体が行う取引について、また、一方の国では構成員課税の団体として取り扱われるが他方の国では団体課税の団体として取り扱われるいわゆるハイブリッド事業体が行う取引について、誰がこの条約の特典を受けることができるか明確な規定が存在しない。一方、新日米租税条約においては、日本や米国のパススルー事業体やハイブリッド事業体が行う取引だけでなく、第三国のパススルー事業体やハイブリッド事業体が介在された取引についても、誰がこの条約の特典を受けることができるか第4条第6項において詳細な規定が置かれている。ここではこれらの詳細な規定について解説する。

条約特典の濫用防止規定

新日米租税条約においては、第22条において特典制限条項が置かれているとともに、第10条第11項(配当)、第11条第11項(利子)、第12条第5項(使用料)、および第21条第4項(その他所得)において濫用防止規定が置かれている。特典制限条項においては、この条約の特典をすべての居住者に与えるのではなく、一定の要件を満たした居住者に対してのみ与えることとしている。

濫用防止規定は、この条約と同等以上の条約の特典が与えられていない第三国の居住者との間に日米いずれかの国の居住者を介在させるいわゆる導管取引を利用することによる条約の特典の濫用(トリーティーショッピング)の防止を目的としている。したがって、第4条第6項で新日米租税条約の特典を受けるためには、特典制限条項および濫用防止規定の所定の要件も満たす必要がある。

規定条文の確認

第4条第6項の検討

以下、新日米租税条約第4条第6項(a)から(e)についてそれぞれ検討を行うこととする。

米国LLCが構成員課税を選択した場合(第4条第6項(a))

他方の国において組織された団体を通じて取得される一方の国の所得で他方の国で構成員の所得として取り扱われるもの(構成員課税されるもの)に対しては、他方の国の居住者である構成員の所得のみ条約の特典が与えられる。この場合、一方の国の税務上その所得が構成員の所得として取り扱われるか否か(構成員課税されるか否か)は問題とならない。例えば、納税者が構成員課税または団体課税を選択することができる米国チェック・ザ・ボックス規則により米国のLLCが構成員課税を選択したとする。この構成員課税を受ける米国LLCが日本の居住者である金融機関に預金をした場合のそのLLCが受ける利子については、米国に居住する構成員の所得として取り扱われる利子についてのみこの条約の特典が与えられることとなる。

新日米租税条約においては、このように居住地国における事業体の性質決定を源泉地国が受け入れることによって条約の特典を与えることとしている。しかしながら、図表1のように構成員に米国居住者以外の者が含まれる場合には、日本または第三国に居住する構成員の所得として取り扱われる利子については新日米租税条約の特典はないことになる。

日本とその第三国の間に租税条約がある場合、第三国に居住するLLCの構成員の所得として取り扱われる利子について、その第三国との租税条約の特典が与えられるか否かが問題となるが、日本の税務上米国LLCを団体課税されるべきものとして取り扱う限りにおいては、第三国との租税条約の特典は与えられないものと考えられる。

図表1のケースにおいてLLCでなく米国において構成員課税を受ける米国パートナーシップが使われた場合についてはどうであろうか。この場合、その米国パートナーシップが日本の税務上、団体課税されるべきものか構成員課税されるべきものかが問題となる。その米国パートナーシップが日本の税務上団体課税されるべきものとして取り扱われる場合には、第三国に居住する米国パートナーシップの構成員の所得として取り扱われる利子については、LLCの例と同様に第三国との租税条約の特典は与えられないものと考えられる。

一方、その米国パートナーシップが日本の税務上構成員課税されるべきものとして取り扱われる場合には、日本とその第三国との租税条約の内容を検討する必要があるものの、原則として平成16年度税制改正による新しい租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法および地方税法の特例等に関する法律(新実施特例法)の第3条の2第1項に規定する「相手国居住者等配当等」に該当し、その第三国との租税条約の特典が与えられるべきであると考えられる。

日本に居住するLLCの構成員の所得として取り扱われる利子については、新日米租税条約の特典は与えられず、日本の国内法により課税関係が完結することになる。

米国LLCが構成員課税を選択した場合



米国パートナーシップが団体課税を選択した場合(第4条第6項(b))

他方の国において組織された団体を通じて取得される一方の国の所得で他方の国で団体の所得として取り扱われるもの(団体課税されるもの)に対しては、その団体が他方の国の居住者である限りにおいてこの条約の特典が与えられる。この場合、一方の国の税務上その所得が団体の所得として取り扱われるか否か(団体課税されるか否か)は問題とならない。

例えば、米国のパートナーシップが米国チェック・ザ・ボックス規則により団体課税を選択したとする。この団体課税を受ける米国のパートナーシップが日本の居住者である金融機関に預金をした場合にそのパートナーシップが受ける利子については、そのパートナーシップが米国の居住者であることを条件にこの条約の特典が与えられることとなる。ここにおいても居住地国における事業体の性質決定を源泉地国が受け入れることによって条約の特典を与えることとしている。

しかし、構成員に米国居住者以外の者が含まれる場合において、その米国パートナーシップを日本の税務上構成員課税の団体として取り扱うときには、米国居住者以外の構成員の所得持分については留意する点がある。図表2の例において、第三国に居住する構成員の所得持分である30については上記の通り第4条第6項(b)に該当するが、かつ新実施特例法第3条の2第7項に定められた「第三国団体配当等」に該当するため、その金融機関がその米国パートナーシップに利子を支払う際には新日米租税条約の限度税率が適用される。

米国Lパートナーシップが団体課税を選択した場合


ただし、この第三国に居住する構成員は新実施特例法第3条の2第12項の規定に基づき所得税の申告書を提出する義務を有することとなる。この場合の納付税額は国内法の規定によって20%を乗じて算出された税額から日本の金融機関からの利子の支払いの際徴収された限度税率による源泉徴収税額を控除した額となる。日本とその第三国に租税条約がある場合において、日本とその第三国の両方の税務上この米国パートナーシップを構成員課税の団体として取り扱うときは、日本とその第三国との租税条約の内容を検討する必要があるものの、新実施特例法第3条の2第1項に定められた「相手国居住者配当等」に該当することから、新実施特例法第3条の2第12項の規定に基づき所得税の申告書を作成する場合において、日本とその第三国の租税条約に定められた限度税率が適用できると考えられる。

また新日米租税条約の限度税率による源泉税納付の後、第三国構成員による申告という2段階課税に代えて、その米国パートナーシップに対する支払いの時点において第三国構成員の所得持分(30)に日本とその第三国との租税条約の規定を適用し、新実施特例法第3条の2第1項に定められた「相手国居住者等配当等」とし、日本とその第三国との租税条約の限度税率による源泉徴収を行い課税関係を完結することも可能であると考えられる。ただし、この点については今後の法整備による明確な指針が待たれるところである。

日本に居住する構成員の所得持分である10についても第4条第6項(b) に該当し、かつ新実施特例法第3条の2第9項に定められた「特定配当等」に該当するため、その金融機関がその米国パートナーシップに利子を支払う際には新日米租税条約の限度税率が適用される。日本に居住する構成員の所得持分である10については、国内法による税額から第三国団体配当等の源泉徴収額を控除した金額を申告納付することとなる。日本の構成員の所得持分である10について、米国団体の所得として米国で租税を課されその租税を米国団体が納付した場合に、その米国で課された租税に関してどのように二重課税を排除するかについては、今後の法整備による明確な指針が待たれるところである。


直接の取引先となる第三国団体が米国で構成員課税の団体として取り扱われる場合(第4条第6項(c))

第三国において組織された団体を通じて取得される一方の国の所得で他方の国で構成員の所得として取り扱われるもの(構成員課税されるもの)に対しては、他方の国の居住者である構成員の所得のみ条約の特典が与えられる。この場合、一方の国の税務上その所得が構成員の所得として取り扱われるか否か(構成員課税されるか否か)は問題とならない。例えば、図表3において米国の居住者が株主となっているオランダのBV(有限会社)について米国の居住者は米国チェック・ザ・ボックス規則により構成員課税を選択したとする。このBVが日本の居住者である金融機関に預金をした場合にそのBVが受ける利子については、米国に居住する構成員の所得として取り扱われる利子60についてのみこの条約の特典が与えられることとなる。ここにおいても条約相手国における事業体の性質決定を源泉地国が受け入れることによって条約の特典を与えることとしている。

直接の取引先となる第3国団体が米国で構成員課税の団体として取り扱われる場合


BVはオランダにおいて法人格を有する法人であり、日本の税務上もBVを外国法人(団体課税の団体)として取り扱っている。日本とオランダから見た場合、この利子の支払いはあくまで日本法人からオランダ法人への利子の支払いであるため、当然日蘭租税条約も適用になるべきである。BVに支払われた利子のうち米国に居住する構成員の所得として取り扱われる部分以外の利子、すなわち第三国に居住する構成員の所得として取り扱われる利子30と日本に居住する構成員の所得として取り扱われる利子10については日蘭租税条約の特典が与えられるべきである。

このように一つの取引に対して二つの租税条約が同時に適用される可能性が今後出てくることが予想される。この場合、当然より有利な特典を有する租税条約を適用することができるべきであるが、今後の法整備による明確な指針が待たれるところである。


直接の取引先となる第三国団体が米国で団体課税の団体として取り扱われる場合(第4条第6項(d))

第三国において組織された団体を通じて取得される一方の国の所得で他方の国で団体の所得として取り扱われるもの(団体課税されるもの)に対しては、この条約の特典は与えられない。例えば、米国の居住者が親会社となっているオランダのBVについて米国の親会社は米国チェック・ザ・ボックス規則により団体課税を選択したとする。このBVが日本の居住者である金融機関に預金をした場合にBVが受ける利子については、新日米租税条約の特典は与えられないこととなる。

ただし、日本およびオランダから見た場合には、この利子はあくまで日本の居住者からオランダ居住者への利子の支払いであるため、当然日蘭租税条約は適用になることとなる。

もう一つの例として、米国の居住者が構成員となっているオランダのCV(リミテッド・パートナーシップ)について米国の居住者は米国チェック・ザ・ボックス規則により団体課税を選択したとする。このCVが日本の居住者である金融機関に預金をした場合にCVが受ける利子については、新日米租税条約の特典は与えられないこととなる。このCVがオランダにおいて構成員課税をうけるクローズドCVである場合、このCVはオランダにおいて納税主体にならないためCVに対する利子については日蘭租税条約の特典も与えられないこととなる。このように、条約の相手国の事業体との取引であっても、どの租税条約の特典も受けることができない取引も生じ得ることとなる。


自国で所得を取得する団体が相手国で団体課税の団体として取り扱われる場合(第4条第6項(e))

一方の国において組織された団体を通じて取得される一方の国の所得で他方の国で団体の所得として取り扱われるもの(団体課税されるもの)に対しては、この条約の特典は与えられない。例えば日本の居住者が構成員となっている米国のLLCが得る米国源泉所得については、LLCが日本の税務上団体課税されるべきものとして取り扱われる限りにおいては新日米租税条約の特典は与えられないことになる。

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