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ニューズレター(税務関連)

2004年2月

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LLCの仕組みと広がる可能性

本稿は、「旬刊経理情報」(2004年2月10日号)より転載したものです。

法務省より2003年10月29日、「会社法制の現代化に関する要綱試案」が公表された。改正項目は多岐にわたっているが、中でも注目されているのは「出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用される」特徴を有する新しい会社類型(いわゆる日本版LLC)の導入が検討されていることである。本稿では、LLCとはどのような会社形態か、米国での活用例、わが国で実際導入された場合の可能性等を、経済産業省報告書「人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案」をもとに検討した。

LLCとはどのような形態か

LLCとは

LLC(Limited Liability Company)は米国州政府が制定した法律に基づき設立される企業形態の一つである。米国には事業を行う代表的な組織体としてLLCの他、コーポレーション(日本の株式会社相当)、ジェネラル・パートナーシップ(日本の民法上の組合相当)、リミテッド・パートナーシップ(日本の有限責任組合相当商法上の匿名組合に類似)等がある。

LLCは組織内自治を特徴とする組合に、コーポレーションの法人格と有限責任性を兼ね備えた点に特徴があり、1977年にワイオミング州で初めて法制化された。当初は税務上の取扱いが明確でなかったためあまり利用されていなかったが、1988年のIRS(米国内国歳入庁)から発表となった個別通達によりLLCはパートナーシップとして税務上取り扱われ、構成員レベルでの課税となるのを認めたことを受けて利用が拡大し、各州でLLC法の制定が進んだ。

1997年にIRSより発効されたCheck-the-Box 規則(法人の組織形態を選択する申告書上、該当箇所のボックスにチェックをすることから、このように呼ばれる)では、LLCの税務上の取扱いを従来の事実を根拠とする判断ではなく、納税者が法人課税か構成員課税か選択できることとなり、課税上の取扱いが簡便化された(ただし、実態が伴う必要がある)。

LLC制度は急速に普及し、1993年時点の約2万社から2000年の72万社まで増加し、現在も年率20%程度の勢いで増加を続けている。わが国には約100万社の株式会社があるが、これに匹敵する数の会社組織がわずか10年間で生まれ拡大していることとなる(図表1参照)。

米国企業数の推移


LLC普及の背景

米国においては近年のIT革命にみられるように、企業の競争力の源泉は、建物、機械設備等の重厚長大な物的資産およびこれを効率的に運営する能力から、アイデア、ノウハウ、技術等の無形資産およびそれを組織特殊的に活用する人的能力へシフトしている。米国企業全体でみても、米国市場総価値に占める無形資産の割合は、1978年には2割度であったものが、1998年には7割にまで飛躍的に増加している。

1980年代以後、米国では株主主権と雇用の流動化が進み、これが組織の変化への適応力を高め、今日の繁栄を導いたと言われている。しかし他方で米国企業は、コアとなる人材をいかに企業に引き止め育成し、競争力を維持するかを模索している。

株主主権型の公開企業においては、株主価値の最大化が大きな命題となっており、時として短期的視点に基づく意思決定から、人的資産のための投資が十分になされなかったり、雇用よりも配当が優先されたりすることがある。その結果、従業員が進んで能力を高めようとする努力をしなくなったり、高度な能力を有する人材が企業を見捨てて、自ら新たな組織を立ち上げたりすることにもつながってしまっている。

このように、株主主権が徹底した米国において、株主主権型の公開企業における一定の限界、人的資産を重視する組織としての限界が浮き彫りになり、その修正に向けた動きとして「人的資産を生かす企業形態」としての非公開型の会社組織が注目されてきている。

米国において非公開型の「人的資産を生かす企業形態」として従来広く利用されていたのは、パートナーシップである。パートナーシップには、利益を目的に共同で事業を行う二名以上の無限責任を負うパートナーからなる「ジェネラル・パートナーシップ」と、業務を執行し無限責任を負う一名以上のジェネラル・パートナーと、業務執行に関与しない一名以上の有限責任のリミテッド・パートナーからなる「リミテッド・パートナーシップ」がある。

パートナーシップの組織形態は日本の組合に相当するもので、組織の構成員が所有者であり、かつ共同事業者として経営に参画する非公開型の組織である。つまり、コアとなる高い能力を有する従業員自らが出資者(=所有者)と経営者をも兼ねることで、人的資産のポテンシャルを最大限に引き出すモチベーションの高い企業形態を築くことができる。

その後、法人組織とパートナーシップの中間の組織形態としてLLCが創設されてからは、法人格と有限責任性を有しながらも、組織内自治を特色とする組合の特徴も兼ね備えているLLCが急速に普及してきた。これは、人的資産の所有者が自主性を発揮するために必要な条件に加えて、パートナーシップでは得られなかった有限責任性を兼ね備えている組織形態であるためと考えられる。

さらに、LLCはパートナーシップ同様、LLC自体が納税主体とならず損益が直接出資者に配賦され(いわゆる「パス・スルー」)、出資者が納税主体となり、二重課税が生じない形態であることもLLCが普及した大きな一因である。

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