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ニューズレター(税務関連)

2003年12月

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新米国移転価格規則案の概略
内部役務提供取引と関連する無形資産取引規定について

本稿は、「国際税務」(2003年11月号/発行元:国際税務研究会)より転載したものです。

2003年9月初頭、米国財務省および内国歳入庁(IRS)は、関連者間役務提供取引に関する施行規則案を発表した。当該規則案は、1968年に発令された役務提供取引に関する規則(「現行規則」)の内容を改正し、拡充させるものである。IRSは2004年半ばまでには最終規則として制定したいとしている。現在この案に対し、一般からのコメントを募っている段階ではあるが、規則案は、現時点におけるIRSの見解を理解する重要な拠りどころとなろう。そして、IRSの現時点での見解が、最終規則として発表される際に大幅に変更される可能性は低いと思われる。

この規則案は、米国と日本の関連会社間での現行の移転価格規定に甚大な影響をもたらすものと予想される。今月号から連載で3回にわたり、この規則案に関する検討を行うが、次号で規則案日本の税務上の観点から規則案の持つ意味を検討し、最終回で日本企業がこの大きな変化に対応するための戦略について述べる。

IRSが改正に踏み切った理由

米国本社と海外関連企業間における役務提供取引を含む国際的な取引の量やその複雑性が増大している環境にもかかわらず、役務提供に関する移転価格の規則はほぼ35年間、変更がなされなかった。この期間、米国や欧州、アジアの主要経済大国から構成される経済協力開発機構(「OECD」)は、1990年代中ばに移転価格ガイドライン(「ガイドライン」)を発令した。その中には関連者間での役務提供取引に関する事項も含まれている。そのため、米国における当規則のみなおしは大幅に遅れをとっていた。また、IRSは役務提供に関し、OECDガイドラインと米国の移転価格規則との間に整合性をもたせる事も検討していた。

さらに、IRSは、米国の移転価格規則において、関連者間における役務提供取引に関する規則とその他の資産、無形資産に関する規則との調和を図ろうともしている。よって規則案は無形資産に関する移転価格規則に関しても修正を加えるものとなっている。

規則案の基本範囲

規則案の分析は、まず、対象取引活動、役務の便益の性質の定義から始めなければならない。IRSの規則改定の目的の一つはこの二つを明らかにし、これらと国際基準の調和を取ることであった。

規則案によると、「(対象取引活動とは)受益者の商業的地位を高める、または高めると予想される経済的または商業的価値を、目に見える形でもたらすような活動を言う」(*1)「予想」とは、より正確に言えば、その活動が遂行される際またはその直前に、ある程度の予測ができる場合を言う。これは、OECDガイドラインの定義に適合する。規則案の序文において、財務省とIRSは「対象取引活動」に関して最も広く定義する事を意図したとしている。それによって、規則案は他の取引でカバーされない関連者間取引をできるだけ網羅しようとしている。

規則案における便益の定義は、非関連者が同様の状況におかれた場合に対価を支払うであろう役務からうける便益とされる。この定義はまた、OECDガイドラインに準じており、規則案の序文(*2)において、現行規則における主観的判断に基づく定義から脱却する意図を明らかにしている。

規則案では、多国籍企業のグループ会社(しばしば、必ずしも本社ではない)が行なうグループ内の全てのメンバー企業に「一般便益」を生み出す活動を否定しているが場合においては、本部経費の国外子会社への配賦を認めている。事実の判断にゆだねられるが、本部機能のうち例えば財務、人事、企画等は、外国子会社に負担させる可能性がある例が規則案に示されている。しかし、外国子会社が、関連性のうすい、または間接的な便益のみ得る場合、またはその活動がすでに子会社で行われている場合、その活動を負担させる根拠は全く見当たらないとしている。

この点に関して、単にグループの一員であること自体が経費の共同負担の対象となる便益となるかどうかということが問題となる。規則案では、関連者グループの一員であるという条件だけでは、移転価格税制上、費用を負担すべき便益を得ていることとはならないとしている。これは、OECDガイドラインにおいても「ただグループの一員であるという事のみの理由で付随的な便益を得る場合、役務提供を受けているとみなされるべきではない」としている(*3)。

株主費用

規則案は、株主費用についても規定している。規則案では、親会社の投下資本を守るための活動、または、親会社の法令遵守目的の活動は便益につながるものではない(そのため、共同負担されるものではない)としている。OECDの基準では、「株主の権利を守る為のみの目的で行った活動に関する費用の請求は正当化されないだろう」(*4)としている。

しかし、規則案では、親会社の行う活動で親会社のみが便益を受ける役務と関連会社も便益を受け、それゆえ共同負担されるべき役務を区別している。また、海外事業や特定の子会社に対する日々のマネージメントに関する活動には親会社の投資を保護する目的のみならず、収益性、効率性の向上など、実際にいくつかの便益をもたらす目的で行われるものがあることを述べている。OECDガイドラインについても同様で、場合によっては、子会社に経費を配布すべき「日々のマネージメントに関する援助」活動があることを述べている(*5)。

セーフハーバー

現行規定では、セーフハーバーを認めておりかなりの役務に関して原価、すなわちマークアップを上乗せしない形で、請求できることになっている。提供する役務が受益者もしくは提供者において不可欠な事業でなければ 原価で請求/負担できるとしている。規則案では、この原価によるセーフハーバーを実質的になくし、「Simplified cost-based method」という、より限定的な方法を導入した。この変更に関するIRSの主要目的は、セーフハーバー適用条件をせばめ、移転価格税制上、高いマージンを載せて経費負担されるべき関連者間役務が「不適切」に原価で負担されないようにすることにある。

Simplified cost-based methodは、重要な高いマージンを載せるべき役務提供の場合には適用できない。そのような役務に関しては他の方法が用いられることになる。以下がSimplified cost-based methodを適用できない役務である。

産業関連

  • 製造、生産、採取、または流通に関する役務
  • 金融取引(保険、再保険、または保証)
  • 再販売、販売、販売代理店または購買代理店としての活動
  • 研究開発、エンジニアリング、試験活動、または「科学的活動」

事業関連

  • 非関連第三者に提供される役務
  • 「かなりの」金額で受益者に提供される役務。すなわち、受益者が支払う手数料は、その売上原価を除いた総原価の50%を超えてはならない。
  • 提供者が持つ独自性があり価値のある無形資産または特定の資源が当該役務の「重要な」部分を占めている。
  • 有形資産の移転と共に提供される役務
    規則案ではまた、Simplified cost methodを適用するために必須である以下の帳簿や記録の管理に関する要件が示された。
  • 納税者は適切な帳簿を保持しなければならない
  • 納税者は、役務提供に関して書面による契約を締結しなければならない。ただし、以下の場合はその限りではない。米国関連者グループの全メンバーの粗利益の合計が20億ドル以下である、あるいはthe simplified cost methodで評価される対象取引に関係する米国全体関連者グループの総費用が一千万ドル以下である場合。

(*1)

Prop. Reg. § 1.482-9(1)(3)(i)

(*2)

序文の中で、IRSと財務省は特定の規則変更に至る動機について、詳細に議論している。序文は、実際の規則案本文に先立つものである。

(*3)

OECD Guidelines, Chapter VII, 7.13

(*4)

OECD Guidelines, Chapter VII, 7.9

(*5)

Ibid.

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