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ニューズレター(税務関係)

2002年2月
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シリーズ 税務争訟の現状と課題 Page5

3.税務訴訟の実務における問題点 − 1

税務訴訟は、納税者からも税務当局からも独立した裁判所が、公平で客観的な立場から、課税上の紛争を解決する制度である。この制度は、国民の権利を保護する上で、非常に重要な役割を担っている。しかし、わが国では、「税務訴訟は必ず負ける」と言われている。そこで、本稿では、わが国の税務訴訟の問題点を把握し、その解決策を提示する。また、国外関連者取引に係る移転価格問題に関して、税務訴訟以外の救済策である、仲裁・調停制度の導入を提言する。

わが国の税務訴訟における問題点とその解決策

わが国の税務訴訟(囲み部分参照)は「不服申立て前置制度」という不備に加えて、訴訟の提起に係る問題点と訴訟の審理に係る問題点がある。

わが国の税務訴訟手続の概要

納税者が、課税庁の行った国税に係る更正処分に不服がある場合は、まず、不服申立てを行い、なお不服がある場合において、裁判所に訴えを提起することができる。この訴えを税務訴訟という。

わが国では、米国にあるような、租税事件を専門に審理する租税裁判所は設けられていない。したがって、税務訴訟も一般の司法裁判所(地方裁判所(第一審)、高等裁判所(控訴審)、最高裁判所(上告審))に提起することとなる。

また、わが国では、不服申立て前置制度が採られており、税務署等または国税不服審判所への不服申立て手続を経た後でなければ、税務訴訟を起こすことはできない。

税務訴訟において、原告たる納税者が訴訟代理人を選任する場合には、原則として、その対象は弁護士に限られる。税理士は、租税に係る事項について、裁判所に弁護士である訴訟代理人とともに出廷し、補佐人として陳述することができる(「税理士の出廷陳述権」)。

なお、税務訴訟が提起された場合でも、その対象となっている更正処分の効力は失われず、また、原則として処分の執行は停止されないこととなっている。

わが国の税務訴訟手続の概要



(1)

訴訟の提起に係る問題点

 

訴訟に係る事務的負担が大きい

訴訟は、裁判所において、対立する当事者の口頭弁論に基づき、各種の尋問、証拠調べなどの慎重な手続を経て行われる。したがって、審理は厳格であるが、納税者にとって、口頭弁論への出席、証拠の提出等、事務的負担が小さくない。

また、わが国では、訴訟を提起する場合には、原則として、不服申立ての決定または裁決を受けた後でなければならない(不服申立て前置制度)。したがって、紛争の解決には時間がかかる。

以上のような問題点を解決するには、まず、係争税額が一定以下の案件については、別に、簡易な訴訟手続を設けることが考えられる。

また、不服申立て前置という制度上の不備を改善するには、納税者が、直接裁判所に提訴できる道を用意することが必要なのではないかと考える。この場合、米国の租税裁判所のように、税務訴訟だけを処理する裁判所を設置して、税金裁判の簡易・迅速化を図ることもあわせて検討すべきであろう。

訴訟コストの負担が大きい

裁判手続は、比較的、口頭弁論にかかる時間が多いため、訴訟代理人たる弁護士への報酬の支払いも多額となりがちである。しかし、現行法では、勝訴した者が敗訴した者に弁護士費用の補償を請求することはできない。したがって、更正処分について税務当局と争う場合に、たとえ処分の取消しを勝ち取っても、弁護士費用の負担は免れないのである。

現在、司法制度改革審議会では、弁護士費用の敗訴者負担を認める方向で意見をまとめている。この敗訴者負担の制度を全面的に税務訴訟に導入するのは問題があるが、違法な更正処分を行って敗訴した場合には、その弁護士費用については、税務当局に補償の請求ができるよう、何らかの措置が必要と考える。

訴訟代理人に係る問題

法律上、税務訴訟の被告となる税務当局は、その職員を訴訟代理人に指定することができる (*1)。これにより、各国税局には、訴訟を専門に担当する「国税訟務官」および、その補助として「国税実査官」が配置されている。なお、税務当局が弁護士を訴訟代理人に選任し、訴訟を行わせることもできる。

一般に、税務当局は一つの訴訟事件で、複数の訴訟代理人を選任する傾向にある。納税者側は、一名の弁護士が代理人になる場合も少なくない。よって、数の力関係では、納税者側は不利な立場にあることが多い。

また、弁護士は、必ずしも租税法の解釈・適用に熟達しているわけではなく、さらに、納税者の経理に関与し、その会計・税務に精通していることも少ない。したがって、租税の専門家であり、納税者の会計・税務に精通している関与税理士が裁判に出廷し、陳述することが望まれるところである。

しかし、現行制度では、税理士は、裁判所の許可を得て補佐人となって裁判所に出廷して陳述するほかに出廷陳述権はなかった。さらに、裁判所は、弁護士には税理士資格があることから、なかなか税理士の出廷を認めないことが多かったのである(図表参照)。

税務訴訟における訴訟代理人または候補者に係る問題点


しかし、平成13年の税理士法の改正により、平成14年4月1日以降、裁判所の許可がなくても、税理士は補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに裁判所に出廷し、陳述をすることができることとされた。これは従前に比べれば大きな進歩ではあるが、さらなる改正が望まれる。すなわち、税理士が、補佐人ではなく訴訟代理人となれる可能性を早急に与えるべきであると思われる。

ただし、税理士が訴訟代理人の地位を得るためには民事訴訟法の知識・実務の習得が必要となるのは当然である。したがって、訴訟代理人の地位を得るためには、司法研修所のような組織に3〜6カ月入ること等の要件を付すことが妥当である。

参考までに、弁理士の場合には、試験で民事訴訟法が選択できることもあり、本人訴訟の場合の出廷陳述権も認められている。さらに、特許庁は、平成14年の弁理士法改正をめどに、特許侵害訴訟などにおいて、弁護士が共同代理人になることを条件に弁理士が訴訟代理人となれるよう、準備を進めているところである(*2)。

以上のように、訴訟の提起に係る問題点の解決に向け、さまざまな施策を採ることは、納税者の裁判を受ける権利を十分に保護する上で、非常に重要である。

(*1) 国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第五条
(*2) 平成13年8月26日付 日本経済新聞 朝刊

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