循環取引は、複数の企業・当事者が互いに通謀・共謀し、商品の売買や役務の提供等の相互発注を繰り返すことで、売上高を計上する取引手法です。一部の商社や卸売業者では、一般に商品在庫の多寡を調整するために、業界内で保有在庫を転売し、在庫と資金の保有比率を適正に維持する商慣行が行われることがあります。一般に商品の転売行為そのものは違法行為として認識されているわけではなく、行為自体を取締まる法的根拠はありません。
一方、循環取引により、売上高の計上を意図的に操作できることから、当該取引を利用して、売上高をかさ上げして企業の成長性が高いように見せるために行う場合や、また、経営者から過度の売上達成のノルマを課せられて、営業担当者や営業管理職が当該取引を行うケースがあります。いずれにしても取引実態を伴わない場合には売上高を過大に計上していることになるので、財務諸表や有価証券報告書に対する虚偽表示の可能性があるでしょう(会社法960条、金融商品取引法条197条1項、207条1項1号)。
循環取引は様々な形態があり、またその条件も多様であることから、全ての取引を網羅することは不可能ですが、以下簡単に取引形態・種類の概要を説明します。
当該取引は、自社が受けた注文をそのまま他社に回す取引であり、複数の企業間で売上の増額を目的として実施されるのが一般的です。また、当該取引は、仕入先又は販売先との他の取引に対する利益補填の目的や、仲介企業を介在させて納入までのラグを利用した押込販売を実施する場合もあります。
当該取引は、最終的に最初の販売元に戻る取引です。例えば、自社が取引の起点となり、商社を通じて販売取引が実施され、最終的には自社が販売した製品等が複数の企業を経由して自社に戻り、在庫等として保有されるものです。
当該取引は、例えば、自社の製品等を市場での実際の価格水準より高い水準で相手方に売却し、相手方または転売先から別の製品等を購入する取引であり、相手方への自社の製品等の売却が実需に基づいておらず、売却した製品等の上乗せ分を購入する別の製品等の価格水準に上乗せして回収する場合もあります。つまり、複数の企業が互いに製品等を相互に販売し、当該相手方の製品等を在庫として保有します。
循環取引においては、以下の理由により取引に関わっていない者が当該取引を発見するのは難しいと思科されます。
循環取引における不正行為は、通常、行き過ぎた売上至上主義が原因となっている場合が多いでしょう。経営者や市場が売上高を重視するあまり、その期待にあやまった形で応えてしまうのです。経営者は決算書を作成するにあたり再度、売上計上の妥当性を検証するとともに、過度な売上至上主義に陥り、内部統制が機能不全を起こしていないか検証する必要があります。